本当はあの子のように、まっすぐな人になりたかった
私には一人、どうしても好きにはなれない女の子がいる。
家の近くに住んでいる、とある女の子。
近所というのもあって、小学生の頃は毎日お喋りして一緒に帰るほど仲が良かった。彼女は絵を描くのが好き、可愛いものを集めるのが大好きな子だった。
友達が沢山いて、明るいし顔も可愛いし、何より性格がいつだってポジティブで前向き。その明るさのおかげか、人望は厚い。本当に明るい。誰に対しても優しすぎる。家庭にも恵まれていて何一つ不自由な生活とは無縁の子。
勝手に「あの子の家庭は裕福で恵まれてる」と決めつけないほうがいい、という人のために一言申し上げるが、何も全くの偏見で言及しているわけではない。
一緒に居続けた結果、私よりもあの子は遥かにほしいものは買ってもらえてたし、お小遣いも多く、実際に話を聞いてると家族交流が豊かだなと感じた。
私はそもそもお小遣いはもらえてなかったし、旅行にも行かない、家庭は親族含め365日常に凍えている環境で育ってきた。
幼いながらに、待遇の差というものを見せつけられているようで、どことなく気に食わなかった気持ちがあったのは今でも覚えている。
それでも、差別発言は一切しない眩い女の子だった。
まぁ、要はものすごくいい子だったのである。
そんないい子が私は嫌いで仕方がない。
嫌いというか、複雑に感じるあまり「おもしろくないなー」という反感な気持ち。仲良くさせてもらっていたし、遊んでるときは普通に楽しいと感じてた。何も常にヘイトを感じてたわけではない。
しかし、それでも申し訳ないが、今でも嫌悪感はじわじわと湧くぐらいには好いていない。
だからと言って、わざわざ攻撃したり誹謗中傷するような真似はしないが、あまりにも無敵に感じて、「幸せそうに笑うあの子は一体何で悲しむのだろう」と捻くれた考えしか出ない。
彼女はかつて好きな男の子がいて、恋を楽しんでいた。アピールが出来ず、うまく話しかけられないよぉと私によく相談してきたものだ。
しかし、私には好きな人がいないので恋の事情等分からなかった。それどころか、恋をしている暇すらなかった。
家では殴られる蹴られる上等な家だったし、友達からは悪口ばかり言われて省かれるし、親族の一人が病気になり、遺産相続や家の名義など緊迫した時期が長らく続いてた。
恋なんてしている場合ではなかった。
話を聞くたび、「なんて贅沢なんだろう、お気楽で楽しそうでいいな」と皮肉ばかり込みあがっていた。小学生の発想だからこの黒い感情は大目に見てほしい。
当時の自分は明日も暗くて不穏な毎日を送って精一杯なのに、隣でいつまでも幸せそうに笑っている彼女が無償に腹立たしかった。
現在は、深い関わりが昔ほどないものの、間接的に互いの認識はしている。ブログやチャットが出来るサイトがあって、小学生の頃から二人してよく使っていた。今でもそこでお互いのブログを読むことが出来る。
もう現実できっと会うことはないだろうが、ブログの更新をし続ければお互いの状況が分かるようなそんな関係。
私は非公開でブログを書き込んでいるから彼女は当然読めないのだけど、向こうは今でもブログを更新し続けている。だから、彼女がどんなことをしているか何となくわかる。
そのブログをたまーに読みに行くときがある。
漠然と今どう過ごしているのかなーと読みにいくだけ。
あれから年月はかなり経つが、今でも彼女のブログは小学生の頃とはぶれずに、明るい文章を綴っている。
愚痴やネガティブな文が一つもない。まるでアイドルみたいに。
ネットでは違う自分を装っている人はいくらでもいるかもしれないけど、現実の彼女を知っている身としては身の毛がよだつ。
私が黒い感情ばっかり孕み続ける捻くれ者だから余計に。
読みながら「いつになったらくたばってくれるかな」と最低な感想を口にしながら読み続ける。
昔から変わらずここまで明るいと、逆になんでもいいから病んでいる姿の一つでも見せてくれないかな。とばかり考えてしまう。最悪な期待を胸に秘めながら覗きに行ってしまう。
正直、性格悪いなー…とは自覚しているけど、育ってきた環境が環境だったもので、彼女のように華やかな気持ちで生きることのできる人にはなれなかった。
同じ病院に生まれて、同じ小学校に通って、ここまで人間の中身が違う。
そりゃ、私だって最初からここまで荒んだ心を持ってはいなかったけど、ステータスがあまりにも違いすぎた。一応、良し悪しの区別は最低限理解しているつもりではあったから、笑顔を装い続けたけど。
だって、彼女は別に悪いことしてないし。
私も彼女に傷つけられたわけじゃないから、恨み妬みで傷つける理由もなかったから。
だからこそ、私も長らく悩み続けた。
嫉妬といえばそうだったのかもしれない。
自分の欲しいものを彼女は沢山持っている。持ちすぎている。何もしてなくても恵んでもらえるお姫様だ。ちょっとぐらいその幸せをわけてもらっても良くない???と感じてたほどには。
もちろん、彼女には彼女なりの苦しみがあって掻い潜ってきた過去があるのもうなずける。誰しも楽しいことばかりで人生はやっていけない。
「くたばってほしい」
別に再起不能になるまで堕ちてほしいわけではないし、本気ではなくただ漠然と思ってるだけなのだけど。
何をしたって、どんなに住んでる世界が違えど私も彼女も平行して成長する。経験をして吸収する。そんでもって今日も生きる
今こそ、環境はそこそこ似ているもので。
お互い大学生であり、勉強をしてバイトをして、月々に必要なお金を稼いで、就職活動に向き合って将来を考えている。
勉強している内容が一部かぶっていたのは少しばかり目を丸くした。
彼女は特に、何も思ってないのだろうな。
そうであってほしい。
気が合う仲で過ごせたわけではないけど、唯一。合致していた点は、「自分の置かれた環境を言い訳に堕落しないこと」だと思う。
私も彼女も、自分のやるべきものを自分で判断して、学んで、今しかない時間を大事にしている。誰に流されるでもなく、自分で道を開く。
「くたばってほしい」と本音で思ってるわけじゃない核はまさにこれかな。
ほんの少し、「お互い違う景色であれど、自分の目で確かめるように世界を見る。二人の間でこれほど素晴らしいことはないかもね」と思ってる自分もいなくはない。
本当は、私だって彼女みたいな明るい性格の人になりたかった。まっすぐ前を向いて前進できる人になりたかった。私の本来なりたかった人物像のほとんどは彼女が持っている。
立派だと思うよ。ほんと。辛いことはきっとあっただろうし、それでもあんなに眩しくて仕方ない。そんな人になりたかった。なれなかった。
嫌いなんじゃなくって、妬みが良い感じにねじれた成れの果てなのかな。
捻くれてるし、黒い感情はどうしたって離れてくれない、もはやペットみたいなものだし。もう自分の本性を受け入れて、うまく生きます。多分、この捻くれは生きづらさ感じるものではないから。
私だって
可愛いものは好きだし、お洒落はもっと好きだよ
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